饒舌な食器

世の中は「捨てろ・捨てろ」の大合唱。

断捨離という言葉が津々浦々まで。

そして人生は長いのに

生きたくても難しい人がたくさんいるのに

「終活」をかかげてこちらも捨てる、買わないの繰り返し。

 

ああ、なんだかなあ・・・。

 

とはいえ、考えられないほどの食器に埋もれて暮らしている私、

捨てないまでもわかりやすく整理しなければなるまい。

 

そのつど手にして迷うのがニッコーのシリーズ。

 

迷うと言っても捨てる、という選択肢はない。

どこにどう保管するか、である。

両親が毎月届くのを楽しみにしていた頒布会で買った器なので

捨てるという気にはならない。

 

昭和三十年代初め、ノリタケやニッコーは

ホームセットと名付けていただろうか、食器を毎月頒布する売り方をしていた。

 

今月は大皿、次は紅茶茶碗など、毎月5客づつ、

いろいろな器が届く。

洋食器がなかった日本の家庭はうれしかったはずだ。

湯呑み茶碗やご飯茶碗がまざり、まさに和洋混在だった。

すきやきセットも含まれた。

 

そんなフルセットが我が家にも何組かある。

昭和初期の一般家庭の風景が見えてくる。

日本の食卓の西欧化はこんな食器メーカーの販売戦略で急速にすすんだはずだ。

 

ニッコーのダブルフェニックスというシリーズを夕食時使ってみた。

楕円の器にハンバーグ。

中鉢には酢の物。

母が大喜びしたのは言うまでもない。

毎月買ったのよ!とそのころの話を楽しそうにしていた。

当初、自分で買いに行ったと話していたが、

いや、毎月届いたかもと記憶を修正。

その頃の暮らしが蘇ったようだった。

 

 

食卓の歴史、

家族の歴史、

器は語る。

捨てる前に使いたい。