大学の食生活論も後半に入った。
食文化の領域、室町のあたりで今年も力が入ってしまった。
懐石と懐石料理は違う。
一服のお茶の前に、
ほんの少し小腹を満たしていただく小さな食事が懐石。
懐石料理とは言わない。
ほんの少しのごはんから始まり、
途中でお酒は出たとしても酒宴ではない。
お茶までの静かな流れでしかない。
懐石とはそういうものだから、
わざわざ「茶懐石」というのも不自然。
くどいようだが、懐石は「茶」に決まっている。
いつからどうして
お茶席の食事を懐石料理とか茶懐石と言うようになったのだろうか。
義母は懐石を研究し、長く教えていたのだから
その混同の歴史を聞いておけばよかった。
彼女は「お懐石」としか言わなかった。
正しい。
かいせきりょうり、には、懐石料理と会席料理がある。
現在これはどちらも酒宴。
最初から酒の肴になる料理が続き、最後に〆のごはんが出る。
器選びや素材、演出、価格に違いはあるようだが
作る側に任された判断のようだ。
この混同はよいとして、茶席と酒席の混同は問題だろう。
私は茶道から遠ざかって久しい。
理由はいろいろあるが、
武家社会の男性のたしなみが
近代化とともに女性のたしなみになったプロセスのほうに
興味があるからでもあるし、
中国から来た嗜好品である茶を、
独自の文化に仕立て上げたその原動力にも大きな興味がある。
学生たちにも、そのあたりを考えてみてほしいのだが、
期待のしすぎだろうか。