食学入門 ―食べるヒト・食べるモノ・食べるコト―

 人間の「食」に関する知識と諸問題を,食べる主役であるヒトと,食べるモノ,食べるコトに分け,多方面から学際的に概観する。イラストや図、写真を多く用いているので、文系理系を問わず大学の教養科目としての「食生活論」の教科書や副読本として,また一般家庭でも役立つ実用書として最適な内容。(2014年9月発行)

荒井三津子 編著

ISBN 978-4-332-04057-6
B5判 16頁 2,200円(税別) “食学入門 ―食べるヒト・食べるモノ・食べるコト―” の続きを読む

「食生活論」の変遷 -その現状と問題-

北海道文教大学 研究紀要 第30号 -2006年3月-

中矢 雅明、清水 千晶、荒井 三津子

Ⅰ.緒言─ 問題の所在─ 近代化の神話に見る食生活という偶像─ 栄養士と管理栄養士の養成施設では「食生活論」あるいは「○○と食生活」という授業が行なわれており,同名の教科書も多数出版されている。これは,1986年,栄養士法施行規則の一部が改正されたことに伴い1987年から栄養士および管理栄養士の養成課程に食生活論が加えられたためである。養成課程の食生活論では,食生態,食文化,食品,栄養,調理に関する知識を食生活として総合的にとらえるほか,栄養士・管理栄養士の役割や重要性を学生に理解させることも求められた。しかし各施設で実施されている食生活論の授業や出版されている多くのテキストの内容は,講義者や執筆者の専門領域に偏る傾向があり,同じタイトル研究論文食生活論の変遷でも学生が学ぶ内容に大きな差が生じている。食生活論の位置付けと方向性,および内容はいまだに明確になっていない。
 その理由を考える前にまずわが国の戦後から現在までの食事情を概観する。マッカーサーが貧しい日本人の食卓を,パンと肉とミルクの豊かな食卓に変えるためにやってきたと述べて以来,日本の食の近代化は欧米化を意味してきた。1949年にはユニセフの供給物資による学校給食でパンと牛乳が日常生活に登場し,1956年にはキッチンカーによる油を使った料理の実習指導が僻地にまで行なわれ話題になった。1960年の国民生活白書は日本の食生活が欧米諸国に比べ劣っていることを明言し,洋風化すべきである旨を強調している)。わが国の食のベクトルは確実に欧米を向いて進んだ。ところが1980年以降,その欧米化に警鐘が鳴り始めたのである。

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テーブルコーディネートの誕生とその機能

北海道文教大学 研究紀要 第30号 -2006年3月-

中矢雅明・清水千晶・荒井三津子

Ⅰ.緒言  1996(平成8)年,食に関する総合的な専門家育成のためにフードスペシャリスト協会が設立された。フードスペシャリストの資格取得には栄養士を養成する大学か短期大学でフードコーディネート論の受講が必須とされ,建帛社の「新版フードコーディネート論」が教科書に指定されている。そこでとりあげる和洋の料理や食器のセッティング,食器の種類や食事のマナー,食空間のイメージ作り等は,すでに一般化している「テーブルコーディネート」の内容のものだが,「新版フードコーディネート論」では「テーブルコーディネート」という独立した項目を設けている。これはテーブルコーディネートの概念と領域の不明確さを示すものである。
 1998(平成10)年には日本フードコーディネーター協会が設立され,フードコーディネーターの養成課程でもテーブルコーディネートの知識が求められるようになったが,その内容と領域も明確ではない。
 テーブルコーディネートは,1980年代のはじめから都市生活を営む女性たちの注目を集めるようになり,指導する教室は大都市を中心に次々に登場し,現在も盛況である。時代の流れを受けて,1990(平成2)年には通商産業省(現在経済産業省)が「ゆとりと豊かさ」を食空間で実現することを目指し,TALK(食空間と生活文化ラウンドテーブル)を設立した。TALKは毎年テーブルウエアフェスティバルを開催し,「やさしい食空間コンテスト」の公募を行なっている。テーブルコーディネート部門には毎年多くの応募がある。同フェスティバルは近年,東京ドームで9日間開催され,会期中約30万人もの来場を得ている。この人気を背景にTALKは2003(平成15)年,テーブルコーディネーターという新しい資格制度を設けた。フードスペシャリスト,フードコーディネーター,テーブルコーディネーターと,次々に食卓まわりの仕事が誕生したが,その違いもまた明確ではない。 “テーブルコーディネートの誕生とその機能” の続きを読む

現代の食事作法 -家庭の教育と新しい方向性-

北海道文教大学 研究紀要 第31号 -2007年3月-

荒井 三津子、清水 千晶、中矢 雅明

Ⅰ.はじめに 経済企画庁が「もはや戦後ではない」と宣言してから50年、日本人の食生活は「豊かさ」を求めて「進化」してきた。外食産業の発展に続き、「中食」が注目されて久しい。「家族団らん」は神話に過ぎなかったのか、家族そろっての食事は少なくなった。食の簡便化が進み、孤食や個食などが問題視され、「共食の場としての家庭」の危機が叫ばれるようにもなった。それに伴って、「共食の場」を円滑に運営するルールである食事作法にも変化が生じてきた。
食事作法の変遷については、井上忠司・石毛直道編の「食事作法の思想」(1990)、および石毛直道監修の「食の情報化」(1999)、vesta(2001)が詳しい。上羽・古郡(2003)は本学の学生のマナーに関する実態調査を行い、学生たちがどのように食事マナーをとらえ、実践しているかを報告した。本稿は、本学の学生が家庭および学校給食の場面でどのような食事教育を受けてきたか、また、周囲の食事環境をどう受け止めているかを調査し、現代の食事環境で守られる「ルール」や期待される「作法」の意義や機能について先行研究に照らしながら考察した。

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食卓の縁起に関する研究 I -恵方巻の受容とその背景-

北海道文教大学 研究紀要 第32号 -2008年3月-

荒井 三津子・清水 千晶

Ⅰ.緒言 年中行事や冠婚葬祭の食卓は、単調になりがちな食生活に刺激を与える。食に関する縁起かつぎや、ことわざ、言い伝えは、ハレの食卓ば、日常にも生かされている。松本(2005)は年中行事が生活文化の根幹をなすものであることに着目して、特に今日まで伝承されてきた行事食について調査し、現代の家庭における非日常食について考察している1)。塩谷(2005)は正月料理の継承について詳細な調査を行い、多様化、個別化しつつも、正月は家族の絆を確認し、食文化を継承する貴重な共食の機会であることを指摘した2)。非日常的なハレの食の多くは無病息災、豊作祈願、子孫繁栄、家内安全、大願成就等などを期待して供されるので、縁起がよいと言われる料理や素材が用いられることが多い。中矢等(1994)は、食い合わせに関する調査を通して、長く言い伝えられてきた事柄は、科学的な裏づけの有無に関わらず、われわれの食生活に大切な役割を果たすことを報告した3)。笠原・伊藤(2006)も、食べ物の言い伝えに関する調査を行い、現在残っている民間療法や古い食習慣等は健康を阻害しない限り伝承されるべきだと述べている4)。女性の社会進出が進み、家族の生活パターンも多様化した近年、年中行事や縁起かつぎ、言い伝え、食習慣等は、人々にどのように受け入れられているのだろうか。本研究は、近年、家族の新しい年中行事として注目される節分の恵方巻きをとりあげる。恵方巻きの起源については諸説あり、学問としてすでに岩崎(2003)が詳しく論じている5)。だが中食の画期的な行事食として、恵方巻きは年々形を変えて提案されており、その商戦と受容の変化は注目に値する。本研究は節分の巻き寿司に関する先行研究と民間の研究所や調査機関等の報告書を整理し、今回調査した結果を比較検討して、恵方巻きという食文化の現代における誕生と流行の背景、意味するものを、販売商戦と合わせて広く学際的に考察する。

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